国土交通省が作成する建設業法令遵守ガイドラインは、元請負人と下請負人との間で交わされる下請契約が、発注者と元請負人が交わす請負契約と同様に建設業法に基づく請負契約であり、契約を締結する際は、建設業法に従って契約をしなければならないことや、元請負人と下請負人との関係に関して、どのような行為が建設業法に違反するかを具体的に示すことにより、法律を知らなかったということによる法令違反行為を防ぎ、元請負人と下請負人との対等な関係の構築および公正かつ透明な取引の実現を図ることを目的としています。
また、国土交通省は、できるだけ多くの事例を対象にすることを考えており、今後、随時更新を重ねて充実させることとしていますので、国土交通省または当ホームページの更新を定期的に確認していただけたらと考えております。
建設業法令遵守ガイドライン-元請負人と下請負人の関係に係る留意点-
1.見積り条件の提示
- 見積条件の提示に当たっては下請契約の具体的内容を提示することが必要
- 望ましくは、下請契約の内容は書面で提示すること、更に作業内容を明確にすること
- 予定価格の額に応じて一定の見積期間を設けることが必要
- 工事1件の予定価格が500万円に満たない工事については、1日以上
- 工事1件の予定価格が500万円以上5,000万円に満たない工事については、10日以上
- 工事1件の予定価格が5,000万円以上の工事については、15日以上
元請負人が下請負人に対して具体的な内容を提示しなければならない事項は、請負契約書に記載することが義務付けられている事項のうち、請負代金の額を除くすべての事項となります。
元請負人は、具体的内容が確定していない事項についてはその旨を明確に示さなければなりません。
そして、施工条件が確定していないなどの正当な理由がないにもかかわらず、元請負人が下請負人に対して、契約までの間に上記事項等に関し具体的な内容を提示しない場合には、建設業法第20条第3項に違反することになります。
元請負人が見積りを依頼する際は、下請負人に対し工事の具体的な内容について、口頭ではなく、書面によりその内容を示すことが望ましく、更に、元請負人は、「施工条件・範囲リスト」(建設生産システム合理化推進協議会作成)に提示されているように、材料、機器、図面・書類、運搬、足場、養生、片付、安全などの作業内容を明確にしておくことが望ましいとされています。
建設業法第20条第3項により、元請負人は以下のとおり下請負人が見積りを行うために必要な一定の期間を設けなければなりません。
上記期間は、下請負人に対する契約内容の提示から当該契約の締結までの間に設けなければならない期間になります。
そのため、例えば、1月1日に契約内容の提示をした場合には、Aに該当する場合は1月3日、Bに該当する場合は1月12日、Cに該当する場合は1月17日以降に契約の締結をしなければなりません。
ただし、やむを得ない事情があるときは、b及びcの期間は、5日以内に限り短縮することができます。
なお、上記の見積期間は、下請負人が見積りを行うための最短期間であり、元請負人は下請負人に対し十分な見積期間を設けることが望ましいとされています。
建設業法上違反となるおそれがある行為事例、および建設業法上違反となる行為事例
- 建設業法上違反となるおそれがある行為事例
- 元請負人が不明確な工事内容の提示等、あいまいな見積条件により下請負人に見積りを行わせた場合
- 元請負人が、「出来るだけ早く」などの曖昧な見積期間を設定したり、見積期間を設定せずに、下請負人に見積りを行わせた場合
- 元請負人が下請負人から工事内容等の見積条件に関する質問を受けた際、元請負人が未回答あるいはあいまいな回答をした場合
- 建設業法上違反となる行為事例
- 元請負人が予定価格が700万円の下請契約を締結する際、見積期間を3日として下請負人に見積りを行わせた場合
上記1~3のケースは、いずれも建設業法第20条第3項に違反するおそれがあり、4のケースについては同項の違反となります。